zakkannist's diary

日々その時の雑感を書き綴ります。

教会での一コマ

大都会の真ん中に
ひっそりと建つ教会。

そこが私の仕事場だ。

毎日多くの人が訪れては
心の平安を多少なりとも掴んで
場を後にしていく。

職業柄
悩みを聞くことが多いが、
私まで心を痛めてしまいそうなものから
世間話に近いものまで
その種類は多岐に渡る。


最近で印象に残った相談に
こんな内容があった。

齢30代中頃の男性が
スーツ姿で教会を訪れた。

男性はどこか虚ろげな様子で
見るからに覇気がない。

しばらく沈黙が続いた。

「お仕事のことですか?」

私が尋ねると
男性は首を横に降り、
ようやく話し始めた。

「私は悪い人間なんです。
先日、前を歩いていた見知らぬ女性に
とてもひどいことをしてしまいました。」

男性は続けた。
「その女性が何か小さな物を落としたのを
私は落ちた音から気づいたのですが、
声をかけられなかったんです。」

「しかも、声をかけるかどうかは
その女性の顔を見てからにしようと
どうしようもない考えが沸いてきて。」

「自己嫌悪になっているうちに、
女性は歩いていってしまいました。」

「私は本当に恥ずかしいことをした。」


胸の内で沸いた感情を
言葉に出して
誰かに聞いてもらうというのは、
その人の心の整理にもつながり
とても大切なことだと思う。



大都会の真ん中で
貴方をお待ちしています。